教員の知的行動学 No.2

                      

利息を生まない貯蓄はやめよう


子どもに好かれる先生は、子どもと一緒に遊ぶ先生である。
子どもに対する好きな先生アンケートでは、必ずといっていいほど、この「一緒に遊んでくれる先生」というのが上位に入っている。
しかし、現実には、この忙しい一日の中で、子どもと遊ぶ時間を見つけるのは、容易なことではない。
業前運動、朝の職員打ち合わせ、教材の準備、6時間の授業、給食指導、清掃指導等と一日中忙しさが続く。
暇などどこにもない。
そして、放課後には、職員会議、学年会議、校内研修、教科部会、教科外の部会等など毎日会議が目白押しだ。
わずかに、いわゆる休み時間というのがあるのだが、その時間も、日記の添削、ノートの点検、宿題調べなどが入るので、ないに等しい。
また、連絡帳に、保護者からの連絡をもらった時は、その日に返事を書くのが礼儀だから、返事を書くだけでもたいへんなのだ。
学級通信を書くことやテストを採点することなどは、勤務時間内に処理することが、ほとんど不可能ということになる。
「とても一緒に遊んでられない先生」が、現実の姿なのだ。
では、この忙しい中で、どうしたら余裕を持って、子どもたちと少しでも遊ぶことができるだろうか。

1、読む。判断する。メモする。綴じこむ。

時間を生み出すためには、「即断、即決、そしてメモ」が最も大切だ。
たとえば、朝に職員の打ち合わせで、たくさんのものが配られたとする。
まず読む。
そして判断する。
「自分に関係のあるものは、何か。
自分のクラスに関係するものは、何か。
自分の学年に関係するものは、何か。」
判断することが大切である。
そして要点を、日程帳にメモする。
そして配られたものを、綴じこむ。
これを、リズムを持って行うようにすることが大切なのだ。
子どもの欠席届が届いたとする。
子どもが何で休むのか、読む。
次にメモする。
そして、欠席届のファイルに閉じこむ。
出張の文書が届く。
読む。
日程帳にメモする。
他の行事と、バッティングしていないか判断する。
そして出張のファイルに綴じこむ。
全て、このリズムで行うようにする。
自分宛に届いたものは、すべて「すぐ読む。判断する。日程帳にメモ。そして綴じこむ。」のリズムで処理する。
このリズムが、空いた時間を生み出す生活のリズムを作っていくのだ。

2、読む。決める。返す。


子どもの作品やテストの処理も同じリズムで行う。
集め終えた次の瞬間が、返すときなのだ。
集めたら、まず読む。
すぐに採点や評価をする。
そして、返す。
これをできる限り、早い時間で行うようにする。
いくらためておいても、これは利息はつかないのだ。
早く処理するのに限る。
習字の作品を集める。
すぐに評価する。
そして返却する。
子どもたちが、かべ新聞をつくったとする。
すぐに読む。
コメントをその場で書くようにする。
そして掲示する。
全て、ためておかないことなのだ。
これが時間を生み出す、鉄則なのである。
校内研究の国語の子どもたちへのアンケート。
集め終わった次の瞬間がまとめる時なのだ。
職員の研修の希望地のアンケート。
もらったらすぐに決める。
そして提出する。
しなければならないこと、出さなければならないもの、返さなければならないものなど、これらをためておいても利息はつかない。
遅くなれば遅くなるほど、めんどくさくなってしまうはずだ。
また提出を忘れると、集めている教員に迷惑をかけてしまうことにもなりかねない。
もらったり、集めたりした、次の瞬間に処理する習慣をつけることが、子どもと遊ぶ時間を生み出す決め手なのだ。


3、読む。メモする。片づける。

研究会でもらった研究冊子、もらった研究物、購入した雑誌、新聞などの整理も、まったく同じだ。
研究会に出るとたくさんの研究冊子をもらうが、次のように処理する。
まず、読めようにする。
次に、大事なことをメモする。
自分の感銘したところ、必要だと思ったことなどを自分の必要度に応じてメモする。
そうするとこの冊子は、もう役目を終えたことになる。
いつか使うのではないかと思っても、使うことはめったにないはずだ。
邪魔になり、教室や家の本棚が汚くなるだけかもしれない。
思い切って捨ててしまったらどうか。
私も以前は、1年間だけとっておこうということで、年度を書いて、1年間だけ保管したこともあった。
しかし、再び見たことは、めったになかった経験がある。
それ以来、全て、読んだら捨てることにしている。
雑誌も同じなのだ。
月刊誌は、5冊とっていたので、バックナンバーを全部とっておくと、たちまち本棚がパンクしてしまう。
小学館の「総合教育技術」は、2年分だけとっておくことにしていたが、再び読むことはめったになかった。
3年分になると、前の前の年の分は捨てるようにした。
どうしても必要な記事は、もちろん切り抜いておく。
そこで、思い切って古いものはすべて捨てるようにする。
雑誌も「読む。メモする。捨てる。」のリズムがいいのかなと、思う。
新聞もまったく同じ。
「読む。メモする。必要な記事は切り抜く。」
このリズムなのだ。

☆どうしてメモするのかというと、忘れないためである。
とにかく読みっぱなしでは、その記憶はいつかなくなってしまうはずだ。
私は覚えているから、大丈夫という人もいると思いますが、自分は駄目だったのだ。
新しいことが入ってくると、前に覚えていた古いことが、消えてしまうことが多かった。
そこで、必ず、メモをした。
要点だけでも、メモしておくようにしたのだ。
そして、時々、このメモノートを見直したりして確認した。


いつか読み直したいといっても、再びみることはほとんどない。
そこで、とっておくことはやめたらどうだろう。
時間を生み出すには、手際のよい身辺の整理が最も大切なのだ。
教員にとって本業は、授業である。
授業の準備に全力であたるには、他の雑事の手際のよい処理が大切なのだ。
雑事をためておいても、利息はつかない。
雑事は素早く片づけて、本業の授業の準備に集中することだ。
そして、雑事から少しでも早く開放されて、子どもたちと運動場で楽しく遊ぶこと、これが教員の知的行動だと思う。

                                

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